効用音楽四原則
1月4日の日記で書いた「効用音楽四原則」。
映画音楽の選曲法についての基本的な考え方で、
サントラファンの間では結構有名な理論なんですが、
せっかくなのでココでちょっと説明。
・インタープンクト、カウンタープンクト
「インタープンクト」は、まあごく普通の選曲法ですね。
勇ましいシーンにアップテンポの曲を使ったり、
悲しいシーンにバラードを流したり、という使い方。
それに対する「カウンタープンクト」とは、対位法といい、
シーンとは逆の音楽を使って効果を上げる方法。
悲しいシーンにあえて明るい曲を使ったりする事で
その感情を増幅させるような使い方です。
黒澤やキューブリックが得意としていた選曲法で
黒澤なら『野良犬』の対決シーンで流れるのどかな「ソナチネ」が、
キューブリックなら『時計じかけのオレンジ』の暴行シーンでの
軽快な「泥棒かささぎ序曲」といったあたりが有名ですか。
・時空間の設定
音楽によって、その作品の時代や舞台を補足描写する方法。
例えばアラビアが舞台のシーンでアラビア風の曲が流れたり、
時代劇に琴や三味線が使われたり、というアレです。
キューブリックの『バリー・リンドン』(舞台は18世紀アイルランド)で
アイリッシュアンサンブルのザ・チーフタンズが演奏してたり、
恩地日出夫の『伊豆の踊子』(音楽は武満徹)で大正琴を使ったり。
・ドラマ、シークエンスの確立
音楽を流し続ける事で一連のシークエンスの区切りを示す方法。
シーンの切り替えやカットバックがあっても音楽が途切れない事で
その出来事が同時進行である事を強調します。
例えば怪獣映画なんかで良く見られる、
戦っている怪獣同士のカット、自衛隊のカット、司令部のカットが
交互に写されたりする場合でも、連続する伊福部マーチで
一連の流れが同一軸上にある事が判ります。
・フォトジェニー
画面が音楽を求めている場合、というと判り辛いですが、例えば
記録映像とかで微速度撮影で花が開花するカットなんかに
ハープがポロロンと入ってたり、眩暈がするような幻惑的なシーンに
ウヨウヨと不協和音の曲が入ったりするアレです。
勿論例外は沢山ありますが、基本的にはこの四つの場合以外には
特に音楽は入れなくてもいい、という考え方ですね。
ただ最近は時代が変わったせいか、音楽べったりの映画が
増えてるような気がしますねえ。特にハリウッド映画に。
あまり音楽だらけにすると、一曲一曲の印象が薄れてしまって
逆効果になってしまうように感じるんですが…。
ちなみにこの四原則は実写映画の場合の話で、古典的なアニメでは
俗にミッキー・マウシングと呼ばれるテクニックが使われてました。
画面の動きに合わせてあたかも効果音のように音楽を使う方法で、
ディズニー作品や『トムとジェリー』等、日本でも初期の虫プロ作品や
伊福部の『わんぱく王子の大蛇退治』なんかこの方式ですね。
ただこれは画面に合わせて後から作曲するからこそ可能な方法で、
予算の関係で溜め録り方式になったテレビアニメではまた別の話、
折衷案の独自な方法論で進化してきたような気がします。
そんな中、ルパンやバカボン、西部警察等々を担当した
選曲家の鈴木清司は、編集で切り張りする事により
独自なミッキー・マウシングを行ってました。
『カリオストロの城』の屋根の飛び移りのシーンなんかを
思い出していただければその超絶技巧が判ると思います。
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